VICTOR F-15 1963
真空管時代最末期に現れた 『ステレオ風2スピーカーFM付き3バンド木箱高級機ピアノブラック』
それは、電子管40年の成熟技術をまるで誇るかのように造られた最期の大型機。
未成熟で、ガジェットの域を出ない半導体ラジオに対して、これでもかと見せつけんばかりに造られた工芸品。
真空管製品の最後の総仕上げを図ったがごとく、その後二度とはこのような豪華品は出ませんでした。
同時期にこのタイプの高級機を世に出したのは、三菱、日立、ビクター。
しかしながら、やはりこの時代のビクターのデザインは他社を寄せ付けません。
このF-15の放つオーラも、ビクター特有のいわばビクターデザインから来るものに違いありません。
その秘密はフロントパネルに置かれる各パーツの配置、比率の美しさがもたらす安定感、スクエアなフォーマル感です。
全盛期のビクターには良いデザイナーがいたのでしょう。高級を表現するすべをよく知っていたようです。
本機の特色を記します。
このF-15はマジックアイ6M-E10を入れて7球のセット。
マジックアイとパイロット球は別建てのヒータートランスで賄っています。
FMフロントエンドは定評のある双三極管17EW8。
AMはバーアンテナ方式で高感度です。
オーディオ回路は、出力トランスの二次側から2.2kΩと0.5μFを介したNFBが前段に掛けられていて、音質改善を図っています。
30A5という定番球ながら、デュアルスピーカーを良い音で鳴らしてくれます。
FMアンテナは短い単線でも十分な感度でしたが、延長あるいは地域によってはT型が必要になるかもしれません。
短い試作品を添付します。
このようなFM機は、コンクリートマンションの室内でもよ良く鳴ってくれるので価値があります。
FM,AM,SW全バンド受信良好です。
・劣化コンデンサの交換(電源フィルターケミコン、バイパス、カップリング、デカップリング)
・ボリュームガリの為交換(特殊品多接点スイッチ付きにて、残念ですが交換により外部入力不可になりました。
元々、トランスレス機の外部入力は事故の元ですから工作致しません。入力はFMトランスミッターでお願いします。)
・VICTORエンブレムにアクリルガラス嵌め込み
・外装仕上げは、オリジナルの黒ラッカーに替えて、漆を使用し、特徴的なぽってりとした質感が出るようにしました。
但し漆職人の本職仕上げには遠く及びません。僅かな埃跡や刷毛カス残り、不完全な部分があります。
直せなかった難点もあります。
どういう訳か、バンド切替スイッチのFMとAMが入れ替っているのです。ランプ表示は正常でバンドと一致します。
普通、ロータリースイッチを外すような修理をすれば、必ず接続配線を延長しなければ元に戻せなくなります。
ですが、本機のロータリーSWは、何も触られた跡がないのです。ハンダを盛り変えた跡がない。
狭いシャシーに、キツキツに収まっているので周辺もバラさないと外せません。ここも半田の付替えはありません。
結論を申し上げますと、メーカーの誤配線としか思えません。
事情は謎ですが、こういった所もご理解の上の入札をお願いします。